お知らせ・日記

HIROKA KISHIMOTO

喜如嘉の芭蕉布展

日々のこと

先日、喜如嘉の芭蕉布展に行ってきました。
(非常事態宣言発令前のことです)

こちらの展示会は呉服屋さんが主催で
ご店主様のご自宅で開催されました。

山に囲まれたとても長閑な場所
秘境の地と言っていい程
周りに人がいるのを見た事がなく
いつも貸切状態で拝見できる特別な場所。

今回は喜如嘉の芭蕉布、しかも
人間国宝「平良敏子さん」の作品が
多く展示されているという事で
とても楽しみに伺いました。

とても貴重な作品や展示品の為
ほとんどの作品は写真NG。
美術館クラスの作品を
至近距離でゆっくり拝見できる
なんとも贅沢な時間を頂戴しました。

いつもでしたら着物と帯のみの展示ですが
今回はストラップや帯留、なんと本の販売もあって



  ↑ 私はこちらを購入。

きちんと読んでみたかった芭蕉布物語に
まさかここで出会うとは!
というより何より
この装丁が素敵すぎて買わずにはいられなかった 笑
嬉しいサプライズでした。


そしてもう1つ惹かれたものが



芭蕉布の端切れを縫い合わせたパッチワーク。
細いものだと5mmほどの幅の端切れ
とても小さな作品ですが、
生命力に溢れとても存在感があったので
一目惚れしました。

中に黄色い芭蕉布が見えますでしょうか?
黄色い芭蕉布は琉球王国の時代
国王しか身につけられない色でした。

生成りや茶色がほとんどの芭蕉布に対し
黄色や藍色などの色のある芭蕉布は
煮綛(にーがし)といって、
一度、芭蕉の繊維の色を抜いてから染めます。

一度色を抜く為
繊維が毛羽立ちやすく切れやすくなり
半分の糸がダメになってしまうそうです。

手間は普通以上にかかる訳ですから
大変貴重で高価なものになります。

黄色は福木という樹木の皮で染めますが
この福木、数年のものではしっかりとした
黄色に染まらない為
数十年ものの福木のみ染料として使えるそうです。

展示品の中に
山吹色に鼠色をほんの少し混ぜたような
華やかだけど渋みのある
日本らしい素敵な黄色の帯がありました。
(写真がNGなのでお見せできないのが残念)

その帯は70年育った福木を使ったそうです。

そして更に驚くことに
この福木は勝手に伐採してはいけません。

台風などで倒れてしまったもの
もしくは道路建設の際切られた福木のみ
使ってもいいそうです。

人間の欲で伐採するのではなく
自然を大切にし任せて恵みをいただく。
感謝の気持ちが溢れてきますね。

今の情勢だからこそ余計に心に響くお話でした。

煮綛の芭蕉布は芭蕉を育てるのに3年
2万2千回糸を括り紡ぐのに1年
それから染めて織るのに2年
計6年もの歳月をかけて作られます。

これ程までに丁寧に作られる芭蕉布
だからこそ小さな小さな端切れであっても
捨てずに最後まで命を使い切りたくなる
とても尊く美しい布なのです。

柳宗悦さんが芭蕉布物語の中でこう表現しています。

「今どきこんな美しい布はめつたにないのです。」

この言葉に尽きます。